シューマンの歌曲をリストが編曲!「献呈(WIDMUNG)」を徹底解説してみた!

難曲

華やかで美しい、そしてドラマティックなピアノ曲・・・それは「献呈」

知名度は「エリーゼのために」のような超有名曲と比べると劣りますが、多くの有名ピアニストが持ち曲として演奏しており、知る人ぞ知る超人気曲であります。

そんな献呈は元々、

ドイツの作曲家ロベルト=シューマンが、1840年に結婚式の前日、妻となるクララ=シューマンに捧げた「ミルテの花」という歌曲集の第1曲目が原曲

結婚式の前日に愛する妻のために書いた歌曲集を捧げるなんて、シューマンはとてもロマンチストですよね♪

そんなシューマンの愛が沢山詰まった「献呈」をピアノ独奏用に編曲したのが、ピアノの魔術師、フランツ=リストです。

リストはド派手な超絶技巧曲を多く作曲しており、この献呈も漏れることなく、華やかでダイナミックな編曲に仕上がっています。

この編曲を聴いたクララ=シューマンはド派手な編曲に激怒したとのこと。

私はリスト編曲の派手な献呈が好きなので、激怒する理由が分からなかったのですが、実はクララ本人もピアノ独奏用に編曲しておりまして、それを聴いて何となく納得しました笑

<Katsufumi Suetsuguさん演奏:クララ=シューマン編曲「献呈」↓>

クララ編曲の献呈はシューマンの原曲により忠実であり、派手さではなく、しっとり歌い上げる感じです。

シューマンの歌曲「献呈」も、クララ編曲の「献呈」もどちらも素敵ですが、今回はリスト編曲の「献呈」にフォーカスして解説していきます!

曲の概要

【作曲者】原曲:ロベルト=シューマン、編曲:フランツ=リスト

【調】変イ長調(シ、ミ、ラ、レ♭)→ホ長調(ファ、ド、ソ、レ#)→変イ長調

【指示】Inning, lebhaft (心から、活き活きと)

【拍子】3/2拍子

【音楽用語】
①accentuato assai il canto(歌の部分に非常にアクセントをつけて)
②poco rit.(少しずつ遅く)
③più rit.(今までより遅く)
④smorz.(だんだん弱くしながら遅く)
⑤dimin. calando(だんだん弱く、和らいで)
⑥espressivo assai(非常にはっきりと)
⑦ritenuto molto(ただちに速度を弱めて)
⑧leggiero vivamente(活き活きと軽やかに)
⑨rinforz.(その音を特に強く)
⑩una corda(ソフトペダルを踏んで)
⑪dolce armonioso(優しく、よく調和させて)
⑫poco rall.(時間をかけて、少し遅く)
⑬cresc. accelerando(だんだん強く、速く)
⑭tre corde(ソフトペダルを離して)
⑮con anima(活き活きと)
⑯con somma passione(最高の情熱をもって)
⑰vibrato assai(非常に音を震わせて)
⑱rin.fz(特に強く)
⑲stringendo(だんだん速く)

非常に多くの音楽用語で指示されており、この曲を華やかに美しく弾いて欲しいという強い意思が伝わってきます。

指示通り弾けなくても、頭の片隅にイメージするだけでも演奏に変化が生まれるはずですので、是非意味を理解してチャレンジしたいですね♪

楽譜

私は全音ピアノピースの楽譜を使っています。500円で手ごろな価格、指遣いも細かく書いてくれていて満足しています。

もっとリストの色んな編曲を弾いてみたい!と言う方は、春秋社から発売されている「リスト集5」がおススメです!(献呈は7曲目に収録)

難所

13小節 右手のラとソを同時に弾く

ここは難所と言うより、私が「楽譜が読めなかった」場所です笑

赤四角で囲った箇所、指遣いが「3,2」と書いてあるので、「このラとソは同時に弾くんだな!」と分かるのですが、なぜか私はこれを見逃しておりまして、「このラは絶妙にソ♭とソ♭の間に挟まれているのでは?」と勘違いして、トリルの様に弾いておりました笑

青四角で囲った箇所が「ラ~~ソラ~~」と言う感じに歌えていたら正しく弾けています!

20-21小節 左手の分散和音

10度-11度-10度の広い分散和音が3回続きます。

特に2番目の11度がきつい人は、上のレの音を右手で取るのもアリです!

手首を柔らかくして左から右にスライドするように弾きましょう。

最初は無理だ~!と思っていても、何度も練習しているうちに無理なく弾けるようになるので諦めずに頑張ってください!

手も少し大きくなるかも!?(大きさと言うより、広がりかもしれませんが・・・)

23-24小節 右手の複雑な2音のアルペジオ

16小節目~は右手で2音でアルペジオを弾くことになるのでただでさへ弾き辛いのですが、特にこの23-24小節目の2音アルペジオは難しいです。

音の響き的に不協和音っぽくて、初めはそもそも本当にこの音であってる?と不安になりますよね。

これはショパンのエチュードOp.10-3「別れ」でも似たような箇所があります(別れの方が無茶を要求して来ます笑)が弾きなれてくると何とも美しいメロディーになってくるので不思議です。

聴かせどころの一つになりますので、手にしっかり覚えこませるよう、反復練習しましょう!

43小節 右手の主旋律と左手の和音

32~43小節は中間部で曲の雰囲気がガラッと変わる箇所になります。

右手で3連符の和音を弾きながら、和音と和音の間に主旋律を入れなくてはいけないので中々ここも弾き辛いのですが、特に43小節が難しい。

難しくしている要因は実は左手ですかね!?

今まで同じ和音の連打だったのに、最後の3音だけアルペジオ形式になって戸惑います。

rit.の指示があるので、余裕をもってたっぷり弾くと良いでしょう。

44小節目 メロディーをしっかり出しながら

44~46小節目は、右手が素早く上下しながら、左手は跳躍する忙しい部分になっており、特に左手を使ってメロディーをしっかり出すことが重要になります。

una corda(ソフトペダルを踏んで)、ppの指示がある場所なので、音が大きくならないように静かに美しく弾くように心がけましょう。

49~56小節 右手のアルペジオ

49小節目からは、普段お目にかからないレベルの上から下へのアルペジオ。

「ドミラド(5の指)ド(1の指)ミラド・・・」と言ったように、音の切れ目が無いように5の指から瞬時に1の指を変えるのは中々難しいです。

初めはリズム練習等も交えながらゆっくり弾いて、徐々に慣らしていきましょう。

58小節目 左手3連符への右手の入れ方

クライマックス、fff(フォルティッシッシモ)で右手も左手も和音の連打。

本曲で一番盛り上がる箇所になりますが、左手が3連符なので、右手が合わせ辛いです。

青四角で囲った箇所が右手と左手の音が一致する箇所。

それ以外は、赤矢印のように左手の音と音の間に入れていく形となります。

何度もやっていくうちに、あまり意識せずとも自然に弾けるようになるので、初めは音の入り方を意識して根気強く練習しましょう。

65-66小節目 鬼和音、特に左手の跳躍

左手の跳躍(装飾音符→和音)が非常に曲者です。

これは、手に音の位置を覚えさせるしか無い!練習あるのみです!笑

68-71小節目 美しきアヴェ・マリアの調べ

なんと、最後にシューベルトの「アヴェ・マリア(エレンの歌 第3番)」が登場

シューマンの曲にシューベルトの旋律が出てくるなんて…なんという感動

右手のアヴェ・マリアの旋律を絶対に響かせるよう意識して弾いて下さい!

2回出てくるので、1回目と2回目の表現も自分なりに変えて弾けると、最高のラストになると思います♪

色んな人の献呈聴き比べ

①世界的ピアニストマルタ=アルゲリッチの献呈

圧巻の演奏ですね!

歌のメロディーがくっきり浮き出ていて、超綺麗です。難しい箇所もさらっと弾いてしまう恐ろしい技術。何度も聴いてしまいます。

②TAKU-音 TV、石井琢磨さんの献呈

YouTubeで色々聴いてきた中で、私が一番好きな献呈です!

非常に柔らかな音色で、癒しの献呈、何度聴いても美しい素晴らしい演奏です。

③世界的ピアニストラン・ランの献呈

他の人には無いラン・ランならではの献呈。

原曲の歌曲のテンポを考えると遅すぎるくらいのスピードですが、これはこれでアリと納得させられてしまうような演奏です笑

④私が4カ月毎日コツコツ練習した成果の献呈

まだまだ聴き苦しい点が多いので、これからも精進します笑

少しでも参考になればと思い、楽譜も合わせて載せました。

原曲「献呈」の歌詞と対訳 ~より演奏を深めるために~

原曲のシューマンの献呈が歌曲ですので、その歌詞を知ることで、より深い演奏になるのではないかと思います…いや、弾くからには絶対に知っておくべきです!!!笑

歌詞からはとにかくシューマンのクララに対する溢れる愛が伝わりますね。

是非、皆様も大切な人にこの献呈の演奏をプレゼントしてみて下さい♪

WIDMUNG 歌詞(原曲、ドイツ語)

①1~15小節目にあたる箇所

Du meine Seele, du mein Herz,
du meine Wonn’, o du mein Schmerz,
du meine Welt, in der ich lebe,
mein Himmel du, darein ich schwebe,
o du mein Grab, in das hinab
ich ewig meinen Kummer gab!

②32~43小節目にあたる箇所

Du bist die Ruh, du bist der Frieden,
du bist vom Himmel mir beschieden.
Daß du mich liebst, macht mich mir wert,
dein Blick hat mich vor mir verklärt,
Du hebst mich liebend über mich,
mein guter Geist, mein bess’res Ich!

③59~73小節目にあたる箇所:①の繰り返し

献呈 対訳・日本語訳

①1~15小節目にあたる箇所

あなたは私の魂、私の心
私の喜び、そして私の苦しみ
あなたは私の世界、私が生きる場所
私の空、そして私が漂う場所
ああ、あなたは私の墓、そこに
私の悲しみを永遠に葬った!

②32~43小節目にあたる箇所

あなたは私の憩い、私の安らぎ
あなたは天からの私に授けられしもの
あなたの愛が、私の生きがい
あなたの眼差しは、私を輝かせる
あなたの愛が、私を高める
私の良心、より良き私!

③59~73小節目にあたる箇所:①の繰り返し

参考サイト:「世界の民謡・童謡

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